待望の新作が出たものの、勿体なく(300ページの文庫本はあっという間に読み終えてしまうのでー苦笑)、しばらくは本棚にしまっておいたのですが、3週間が経ち、今週とうとう読んでしまいました。
今回は特別卷と題して、TVの人気連続ドラマが完結した後で作られるスペシャル版のように、登場人物のその後を描いたもの。本編の終わりで澪と野江が故郷の大阪へ旅立ったので、今回は江戸の残った種市とつる屋の常連たちで一話、一時期、澪が夫婦になりかけた小野寺数馬の夫婦生活で一話、後半が大阪に舞台を移して、実家を再興した野江で一編、最後に主人公の澪のエピソード、と、全部で4つの短編集のような体裁です。
正直なところ、長らく続いた本編ほどの興奮・感動は起きませんでしたが、やはり高田郁独特の世界に引き込まれる結果はこれまでどおり。料理人として成功し、幼友達の野江ちゃんを吉原から救い出すという大きなテーマが完了した後では、登場人物たちが年齢を重ねたこともありで、本編のようなシリーズには出来ない中で、いわばファンサービスとして(読者からの要望が多かったのだろうなあ)”その後”編を書いていただいたようなものでしょう。野江と澪がそれぞれの新たな生活を築いていく中で幸せを育んでいく展開は、読者としても納得の行くもので、著者に感謝です。野江と澪の二人共が幸せになっていく様子には、良かったなあと読者を安堵させてくれるものがあり、読後感は上々。
さて読み終えた今の気持ちは、来年には是非、現在続いている『あきない世傳』の続きを出していただきたい!